貴方は私の手本です
古い友人ががんで亡くなった。
同じ歳の女性でイタリアンレストランのシェフをしていた。
彼女との出会いは15年以上前の事。
たまたま行きつけの飲み屋で出会った。
ベリーショートにスレンダーな体。
パッと見たら青年のような女。
気難しそうでとっつきにくいイメージだったが、彼女の作る料理に愛情を感じた。
頑固女が作るイタリアン。
繊細だけど深く、愛のある料理。
すぐに魅了された。
私が写真を撮っている話をすると、写真展に来てくれた。
私の撮る桜が好きだと、何度も言ってくれた。
徐々に打ち解け、色々話している内に同じ年だと知る。
趣味も似ている
好む花も似ている
頑固な所も似ている
少しだけ、生き方が似ている
彼女のお店の近くには「大山豆桜」と言う早咲きの桜があり、いつしか私は都内の桜撮影の最初のシューティングはこの桜になっていた。

男勝りで元気な彼女。
でも繊細でかわいい女。正にこの大山豆桜のようだ。
桜が咲く頃、いつも満席のカウンターを見ながら彼女に軽く手を振る。
軽くふっと笑顔返ししてくれるが、変に媚びを売ることもしない。
カッコイイ女。
関係が濃かったか?と言われたら、そうでもない、のかもしれない。
でも何年も会話していなくても、お互い気になっていた。
深く語り合ったあの日々があったからだろうか。
去年末、久しぶりに彼女の料理が食べたくて、お店を訪ねた。
彼女に会うのは、私が病気になり手術をする直前以来だった。
久しぶりに会った彼女はがんに侵されていた。
彼女は闘っていた。
絶対負けないと言っていた。
私を手術に送り出してくれた時と同じ目で。
強い瞳をしていた。
信じていた。
頑張った。
生き抜いた・・・
多く語らなくても分かり合える友が逝ってしまった。
最後に会った時、もう食べれなくなっていた。
「大泉、お酒飲ませてよ。私が一番好きな物だから」
本来だったらがん闘病してる友人に飲ますべきじゃなかったのかもしれない。
でも私は彼女とワインをしこたま飲んだ。
飲んで欲しかったから。
好きな物を好きなだけ。
その日は大笑いした。暗い話じゃなく、楽しかった事の話ばかり。
それが彼女と会った最後。
今年の桜の頃、いつも通り、この桜を撮った。
お店のカウンターはいっぱいで。彼女が働いている後ろ姿を見た。
ああ、大丈夫だ、
そう思った。
立ち寄らなかった。
どうして立ち寄らなかったのだろう?
今は後悔ばかり・・・
でも思い出すのは子供のように笑う彼女の顔。
自分の信念を曲げず、最後まで生き抜いた貴方は私の手本です。
どうか安らかに。
またいつか、あっちの世界で会ったらワイン飲もう。しこたま、ね!
ありがとう。

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コメント
とても素敵な女性ですね。
とてもかっこいい生き方だと思います。
私も見習いたいです。
ご冥福をお祈りします。
投稿: めぐ | 2016年6月14日 (火) 17時08分
めぐさん、ありがとうございます。
本当に素敵な女性でした!!
私も彼女を見習ってしっかり生きていきたいと思います!
投稿: 大泉美佳 | 2016年6月14日 (火) 21時00分